SUNDINISTA! – The Clash

ALBUM

SUNDINISTA!(サンディニスタ)は、70年代後半~80年代前半まで活躍したパンクバンド、The Clash(ザ・クラッシュ)の4作目のアルバム。36曲収録されている3枚組として発売されている。1年前にリリースした「ロンドン・コーリング」も2枚組だったが、これは全て新曲36曲だ。このアルバムに対する世間の評価は分かれるところだったと思う。

前作がファンが望むクラッシュのサウンドだったとすれば、このアルバムのサウンドは単純に評価できるようなものではなかった。さほど売れてもいないんじゃないかと思う。

当時の音楽雑誌(何だかは覚えていないが)がクラッシュのニューアルバムのタイトルは「サンディ2スタ(日曜日の2スタジオ)」なんて紹介していたと思うが、「サンディニスタ!」はニカラグアの左翼政党、サンディニスタ民族解放戦線の事のようである。収録曲「Washinton Bullets」の曲中、「サンディニスタ」というフレーズが出てくるが、ワールドワイドな政治的アルバムといったら誤解を招くかもしれないが、とにかく曲数からいっても非常に雑多なものを詰め込んだ感じのアルバムとなっているのは事実である。個人的見地からして、このアルバムは「お気に入り上位」であるのも確かだし、高評価だからこそ、わざわざサイト内で紹介する訳だが、このアルバムの全てを理解している訳ではないし、気に入っている所ばかりではない事は、とりあえず断っておきたい。

先ず、アルバムジャケットのデザインが酷い。

持っているのを知られるのが恥ずかしいくらい、といったら言い過ぎか?でも警官、アンタッチャブル、カウボーイ、コンバットに扮するバンドメンバーの写真は酷すぎる。

ビレッジピープルの方が人数が多い分まだマシだと思う。


マッチョマン

(ビレッジピープルのファンとクラッシュのファン両方に怒られそうなマッチングかもしれないが・・・たぶん世間の評価はそんなものかも・・・すみません)

そして、LP3枚組だ。

ジョー・ストラマーは当時、3枚組をアルバム1枚分の値段で出す、なんて言っていたらしい。実際にイギリスではその値段で発売されていたのかもしれない。そのあたりはよく判らないが、日本版の値段は、4,900円だった。まあ2枚組でも5,000円と考えれば高すぎるとはいえないのかもしれないが、決してお得感があるとは思わなかった。しかも、このダサすぎるアルバム・ジャケットで、この値段で買うか?という部分で非常に迷った覚えがある。(結局買ったのだが・・・)

でも中ジャケットはかなり凝っていて、収録曲もかなりバラエティに富んでいて、粒ぞろいとは言わないが雑然とした中にも光り輝く曲がある、といった感じの内容だ。賛否両論あるようだが、自分としてはクラッシュのアルバムを1枚選ぶとしたらこれがベストになろうかと思う。

現在のストリーミング時代、既に1曲いくらという時代ではないし、LPのA面B面を楽しむ、という聞き方もする時代では全然ないので、曲を聴くだけならダウンロードでも何でも良いのだが、実はコレクターズアイテムとして、当時のレコード盤を持っていることが自慢だったりする。しかし冒頭に書いたように「持っているのを知られるのが恥ずかしい」というのとは矛盾している。この辺りはどうしたものか・・・まあ、実際に中ジャケというか、インナースリーブというか、歌詞カードのデザインは非常に素晴らしく、ここは「CD」ではなく、「LP」で持っている事を自慢したくなる所以でもあるが、それならば英国で発売されたオリジナルを持っていた方が良いだろうし、このあたりも、どうでも良い事で悩ましいレコードといえるだろう。


SANDINISTA

しかしこのクラッシュというバンド、セックスピストルズとかストラングラーズ(当時は人気あったと思うが今時は不明)等と合わせて日本におけるパンクバンドとしてはおそらくファンが多いバンドの一つだったんじゃないかと思うのだが、バンドリーダーのジョー・ストラマーという人はあまりパンクというファッショナブルなシーンに似合わない人だったと思っている。おそらくボブ・ディランに憧れていたと思わせる部分が多々あるし、このアルバムに限定していえば、音楽性が既にパンクではない。もちろん自分自身、パンクに関しての拘りもさほどないので、こだわり加減はかなり曖昧な部分ではあるため、仮に存在がパンクだとか、行動がパンクだとか言われても、そのあたりにはあまり興味がなく、あるとすれば「パンクっぽいサウンド」っていうのはやっぱりあるんじゃないかと思う。その中には「スピード感」や「粗暴さ」、あるいは「攻撃的」でなおかつ「センチメンタル」だったりするかもしれない。で、このアルバムに関しては先にも書いたが「ワールドワイド」的な要素が盛り込まれていて、さながら「ポピュラーミュージック」のスーパーマーケット状態なため、そうでないものも多数含まれているといった感じになっている。そこには混沌としたカオス状態というか、ゲスト・ミュージシャンの多さからも生じるものかもしれない。

詳しい部分はここでは書かないので、アルバム内容についてはWikiで確認してください。

さて、36曲も紹介するのはかなり書くのがしんどいが・・・読むのもしんどいかもしれない。

でも紹介するのが趣旨のサイトである訳だから面倒臭がらず、付き合ってください。

7人の偉人 (The Magnificent Seven) – 5:28

タイトルはおそらく、西部劇映画から来ている。その元は「7人の侍」かもしれない。音楽形態は「ラップ」といっていいだろう。おそらく白人のラップとしては史上初くらいなのかもしれないが、サイド3収録の「ライトニング・ストライクス」にも通じる部分がある。ラップを取り入れたのか、ボブ・ディランの「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」のオマージュなのか、あるいは両方なのか、よく判らないが、これらの曲がこのアルバムの持ち味をリードしているのは確かなところである。

どうやらこの2曲はベースがポール・シムノンではなく、イアン・デューリー&ブロックヘッズのノーマン・ワット・ロイらしい。サウンド的には(このアルバム全般に言えることだが)ドラムにエコーというか、リヴァーブ効果がかかり過ぎている。このあたり、ダブ・ミックス担当のマイキードレッドの影響と責められているような気がするが、プロデュースのクレジットはクラッシュ自身であるため、あまりそこを責めるべきではないように思う。しかしながら、EP版「コスト・オブ・リヴィング」の頃のサウンド・クオリティと比較すると、音の粒が揃っていないのは残念なところ。まあ、それによって独特のダークな世界観を醸し出しているともいえるので、全てを悪い方向に捉える必要もないのだが。

ヒッツヴィルU.K. (Hitsville UK) – 4:20

ボーカルはミック・ジョーンズと、当時彼女だったとされるエレン・フォーリーのデュエット。普通にポップスでビックリするかもしれないが、元々ミック・ジョーンズの歌はそういうのが多いと思う。個人的に彼のそういったセンチメンタリズムというか、ロックンロールナルシスト系の弱っちい感じが日本のロックンロール的であまり好きではない所だが、この曲はスッキリとしていて好印象。ちなみにシングル・カットされたっぽいが売れてないみたい。ちなみにこのアルバム中、ヒットした曲はないみたい。

ジャンコ (Junco Partner) (作者不詳) – 4:53

なんだこれは?という曲だ。レゲエなのかスカなのか・・・おそらくかなり間抜けな部類の歌といえるだろう。誤解を恐れず日本的にいえば「小原庄助さん」のようだ。ジョー・ストラマーという人の音楽遍歴の中にこういう変な曲があるんだと思わせる。この曲はLPでいう所の6面で、ダブバージョンとしてもう一度出てくる。

イワンがG.I.ジョーに会う時 (Ivan Meets G.I. Joe) – 3:05

この曲のボーカルはドラムのトッパー・ヒードン。ロシアの代表がイワンで、アメリカ代表がG.I.ジョーっていう感じで、ゲームセンターのピコピコ音の中戦っているような曲というか。歌は正直、どうでもいいというか・・・この曲の話ではないが、このトッパー・ヒードンという人が叩くドラムのセンスはとても良くて、クラッシュのサウンドがバラエティに富んでいる理由の多くは彼のドラミングだといって過言ではない。ジョー・ストラマーもどこかのインタビューで喋っていたと思う。まあ・・たまにはリードボーカルで歌っても良いんじゃないかと。

政府の指導者 (The Leader) – 1:41

ロカビリー、である。ストレイ・キャッツのようなもっとストレートにロカビリーチック。演奏はドラムがカッチリとしていて、なんというか、何かの教本のサンプルじゃないの?と思わせるくらいに型どおりな印象。「みんな日曜日には何かいい本を読む」LEADERとREADのしゃれなのか、よく判らないが、そんな曲。

老いたイングランド (Something About England) – 3:42

ミック・ジョーンズのヴォーカルでイギリスの老兵をセンチメンタルに歌う、どちらかといえば苦手系のサウンド。とりあえずこの曲がA面というかサイド1ラストの曲。今のところ殆どの曲を誉めていない気がするが・・・36曲も詰め込むからそうなるのかもしれないというか、まあ「へんな曲」というのもある意味貶している訳ではなく、個性を誉めているともいえる訳で。ただこの曲は「苦手」。ミック・ジョーンズは全般的にあまり得意ではない。そういう意味でクラッシュというバンドのコストパフォーマンスは(個人的には)下がりがちだが、まあ中には彼のヴォーカルで良いのも出てくるので。とりあえず・・・

叛乱ワルツ (Rebel Waltz) – 3:25

これはジョー・ストラマーのヴォーカルだが、割と気持ち悪い。サウンド的にはディレイの効いたギターに凝ったテンポで叩くドラムが中々技巧的ではあるのだが、下手にPOLICEを連想させてしまう分、その技巧も付け焼刃というか・・・ちょっとドンくさい感じを否めない。戦争を題材にしたナルシスティックな歌詞にしても、割と気持ち悪く。求めているものが謎なまま、曲は終わるといった感じである。

ルック・ヒア (Look Here) (モーズ・アリスン) – 2:44

モーズ・アリスンが誰だかよく判らないが、これはいわゆる「シュビドゥビシュビドゥバ」系音楽。ドラムが頑張っている。このトッパー・ヒードンというドラマー、異名が「ヒューマンリズムマシーン」との事で、かなり正確に叩くタイプといえるだろう。彼のドラムあってこその曲といっても過言ではない。

歪んだビート (The Crooked Beat) – 5:29

これはベースのポール・シムノンがボーカルをとっている。この人はレゲエ好きで、この曲もどちらかといえばお間抜け系なボーカルでサイド1の「ジャンコ」に通じるものがある。前のアルバム「ロンドン・コーリング」収録の「ブリクストンの銃」はクールでカッコよかったが、こちらはテイストは近いがカッコよくはない。まあ悪くはない。

誰かが殺された (Somebody Got Murdered) – 3:34

これはたぶん、ジョー・ストラマーが作っている曲(何かのインタビューで読んだような気がする)をミック・ジョーンズが歌っているんだと思う。「どこの誰だかわからないが、誰かが殺された」題材的にはシビアだが曲調はポジティブでありエネルギッシュ、そのアンバランスさが悪くない。

ワン・モア・タイム (One More Time) (ザ・クラッシュ / マイキー・ドレッド) – 3:32

これは個人的にかなり良い。イントロから演奏の力強さも中々だし、ジョー・ストラマーのボーカルも中々。(言い方は失礼だが)真面目に作っている感じのサウンドだ。

ワン・モア・ダブ (One More Dub) (ザ・クラッシュ / マイキー・ドレッド) – 3:34

前曲「ワン・モア・タイム」のダブヴァージョン。これもダブ・ヴァージョンが必要なのかは判らないが、この曲のタイトル「ワン・モア・タイム」がそのまま繰り返される訳で、この曲に関してはむしろ「もう一回」出てくる事は望むところである。

ライトニング・ストライクス(電光一閃!おんぼろニューヨークを直撃) (Lightning Strikes (Not Once But Twice)) – 4:51

サイド1の1曲目でも少し触れているが、これもまた、このアルバム中でもキーになる曲の一つだと思う。誤解を恐れず書いてしまえば、この曲中の「Not one but twice」(一度ならず二度までも)というフレーズは、2001年9月11日の同時多発テロを予言(あるいはなんらかの関連)していたのではないかとずっと思っていて、この曲が作られたのはおそらく1980年位なので、20年前からあの光景は一部の人に予見されていたのかもしれないと、思っていたりする。もちろんイスラムのテロ組織アルカイダに詳しい訳でもないし、作戦をジョー・ストラマーが知っていた、あるいはアルカイダがこの曲からインスパイアされた?なんてのも無責任に仮説を立ててはいけないとも思う。が、しかしこの曲の内容はいずれにしても、かなり尖っていて、攻撃的なのは事実だと思う。

ロンドン塔 (Up in Heaven (Not Only Here)) – 4:31
コーナー・ソウル (Corner Soul) – 2:43
レッツ・ゴー・クレイジー (Let’s Go Crazy) – 4:25
もしも音楽が語ることができるなら (If Music Could Talk) (ザ・クラッシュ / マイキー・ドレッド) – 4:36
ザ・サウンド・オブ・シナーズ (The Sound of the Sinners) – 4:00
ポリス・オン・マイ・バック (Police on My Back) (エディ・グラント) – 3:15
ミッドナイト・ログ (Midnight Log) – 2:11
平等 (The Equaliser) – 5:47
ザ・コール・アップ (The Call Up) – 5:25
サンディニスタ!(ワシントンの銃弾) (Washington Bullets) – 3:51
ブロードウェイ (Broadway) – 5:45
曲の最後にマリア・ギャラガーが歌う「ブリクストンの銃」が挿入されている
ルーズ・ディス・スキン (Lose This Skin) (タイモン・ドッグ) – 5:07
ボーカル: タイモン・ドッグ
チャーリー・ドント・サーフ(ナパーム弾の星) (Charlie Don’t Surf) – 4:55
メンズフォース・ヒル (Mensforth Hill) – 3:42
「老いたイングランド」の逆回転
ジャンキー・スリップ (Junkie Slip) – 2:48
キングストン・アドヴァイス (Kingston Advice) – 2:36
ストリート・パレード (The Street Parade) – 3:26
ヴァージョン・シティ列車 (Version City) – 4:23
リヴィング・イン・フェイム (Living in Fame) (ザ・クラッシュ / マイキー・ドレッド) – 4:36
「もしも音楽が語ることができるなら」のダブヴァージョン。ボーカルはマイキー・ドレッド
シリコン・オン・サファイア (Silicone on Sapphire) – 4:32
「サンディニスタ!」のダブヴァージョン
ヴァージョン・パードナー (Version Pardner) – 5:22
「ジャンコ」のダブヴァージョン
出世のチャンス (Career Opportunities) – 2:30
ルーク/ベン・ギャラガーが歌う新ヴァージョン
シェパーズ・ディライト (Shepherds Delight) (ザ・クラッシュ / マイキー・ドレッド) – 3:25

タイトルとURLをコピーしました