Blowin’ in the Wind – Bob Dylan –

オルタナティブ

このサイトを立ち上げようと思った理由の一つは、ボブ・ディランのノーベル賞受賞だった。その前からディランのファンサイトを作ろうと思ったことはあったのだが、果たしてそれを誰が見るんだという思いもあった。
しかし、ノーベル賞だ。
ディランのファンじゃなくたって見るかもしれない。そこから、ボブ・ディランの魅力を知る人もいるかもしれない。だったら書いてもいいかもしれないと思って、ついでに自伝的に自分の音楽履歴を書き綴ってもいいかもしれないと思ったのだ。
と、思いついて数カ月、実際にその日その時に思いついた曲の記事を書いているのだが、何故かボブ・ディランにいきつかない。そりゃそうだ。今自分が頻繁に聴いているのが「Spotify」の「Classic Punk」とか「Early Alternative」なんてプレイリストだったりするのだが、その中にはディランの存在はない。
だが、それらのプレイリストに登場するアーティストの多くが、ほぼ間違いなくボブ・ディランの影響を受けているのは解る。具体的にどこがというのは難しいが、歌い方やファッション、歌の主題の捉え方、音楽やそれ以外のルーツなど、随所にディランの影響を感じる事が出来る。でもそれらの関連を断片的に書き連ねる事は可能だとは思うけど、一応、ボブ・ディランの作品を時系列的に追った方が良いんじゃないかなと思ったりもする訳だ。とはいえ、その膨大な作品群を洩れなく挙げていくとこのペースでは生きてるうちに終わらないかもしれない・・・
と、いうことで、先ずは時系列的に代表的な曲(若しくは自分が気に入っている曲)のみ、挙げていこうと思う。

「風に吹かれて」はボブ・ディランの代表曲である。セカンドアルバム「Freewheelin’ フリーホイーリン」に収録されていたが、当時シングルカットはさなかったんじゃないかと思う。ヒットしたのはピーター・ポール&マリーのカバーであって、ボブ・ディランのレコードはたぶん、当時それほど売れてはいなかったはずだ。(といっても10万~20万枚という単位でアルバムは売れてたと思うが)ボブ・ディランの場合、多くのフォーク・ソングファンが演奏し、歌える事が重要だったのだろうと思う。この曲に限らず、当時のボブ・ディランのレパートリーの多くはプロテスト・ソングと言われたようだが、この曲は「答えは風に吹かれている」といった直接的な批判ではなかった所が幅広く受け入れられる元になっていたようである。
ピーター・ポール&マリーのバージョンを聴いてみてほしい。

ボブ・ディランのバージョンはなんともお間抜けというか、良く言えば丁寧であり、それゆえある種のぎこちなさまで感じる。

この曲はライブで演奏される事は非常に多かったに違いなく、多くのバージョンが残っている。
先ず、ザ・バンドとの共作「偉大なる復活」から。

こちらは「激しい雨」のライブをTVで放送したバージョン。(レコード未収録)ジョーン・バエズとのデュエットで、ギタースタイルも独特だ。

こちらは武道館。日本ではこの曲が一番メジャーということだと思うが、気持ち悪いくらいに丁寧に歌っているような気がする。

ブートレッグを含めばまだまだあるのだろうが、この位にしておこう。
じぶんは正直、この曲にはさほど思い入れがないというか、大して好きな歌という訳でもない。
でもこの歌が持つある種の普遍的テーマが、日本におけるディランの評価「フォークの神様」という誰が言い出したのか判らないけど困った評価をこの曲の中に求めるのだろう。どれだけの道、どれだけの海・山、または人、砲弾であり、死である。そしてどれだけ目を背け続けるのか。その答えが風に吹かれているというのだから、これはやはり文学的というか、20歳そこそこの、まあそれなりに顔の整った若者?が作ったということでも意義があったのかもしれない。
実際、当時のアメリカでプロテスト・ソングを作る一派があったようで、ボブ・ディランもその辺りの諸先輩方に可愛がってもらった事があるようだが、この「風に吹かれて」以前のプロテストソングはかなり直接的な、批判的な歌が多かったようだ。
この歌は答えを出していないという点において、とても深みのある内容のある歌となったという事だろう。
そういった意味でも端的に秀作であることに疑問を挟む余地はないのだが、自分はさほど好きな曲の一つではない。何故か?当時のボブ・ディランは結構いい歌を他にも書いているので、その比較と考えれば、この歌だけに光が当たりすぎることがどうにもあまり気に入らない。結局そういうことなのだと思う。
ただ、この曲をボブ・ディラン本人はたぶん好きなんじゃないかという気はする。世間の評価が高い曲だし、ディランの自作曲の中では簡潔にまとまっているという意味で、次の「時代は変わる」なんかよりもスマートであるし、後に「アイ・シャル・ビーリリースト」のような歌い継がれる曲も出てくるのだが、ディラン作で他者が歌いやすい曲は、実はあまり多くない。そんな中で一応、スタンダードナンバーといえる曲の一つなんだと思うので、そのあたりの名誉的な意識を擽る曲でもあるんじゃないかという気がするのだ。

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